Interview
私が勤務する鹿嶋ハートクリニックは、循環器の疾患に特化したクリニックです。狭心症、心筋梗塞、心不全、不整脈などに対して、安心・安全な医療を提供しています。カテーテル治療や、不整脈のアブレーション術、経皮的冠動脈形成術(PCI)、私の専門でもある心臓血管外科の冠動脈バイパス手術やステントグラフト内挿術といった、循環器領域における専門治療を行っているのが特徴です。クリニックでありながら、これだけ専門的な手術を実施している施設は全国でも数少ないと思います。当院では、大動脈弁置換術や複雑な僧帽弁形成術のような高度な治療にも対応可能です。
そうした専門治療に加えて、当院では循環器疾患の患者さんがベースとして抱える生活習慣病など、慢性的な疾患に対応するかかりつけ医の役割も果たしています。私たちには地域の患者さんたちの一次予防、検診で異常が見つかった方に対するフォローなど、今後の疾患の発症を防ぐ診療が求められているのです。循環器疾患のある患者さんの中には、高血圧や糖尿病などいくつかの疾患をお持ちの方がいらっしゃいますので、そうした患者さんを総合的に診る力を養うことができるのはとても勉強になります。専門治療とかかりつけ医の役割を同時に学べる。それは、当院のように地域で専門医療を提供するクリニックだからこそ経験できることだと思います。
私は神奈川県の出身で、金沢大学医学部へ進学。卒業する頃には外科を専門にしようと決めていました。当時、解剖学を熱心に勉強していた先輩の影響で、解剖の実習に参加させてもらううちに、人体を直接自分の目で見て治療する外科に魅力を感じたのです。その後、岡山大学の心臓血管外科の医局に所属し、小児の循環器治療についても学びました。2016年からは昭和大学江東豊洲病院に勤務し、2021年の5月に神栖市に来ました。
鹿嶋ハートクリニックは昭和大学江東豊洲病院心臓血管外科の修練施設の一つとして、専門医の育成に力を入れている施設です。前任の医師からは、ここでの研修について「大学ではなかなかできないような充実した研修を受けることができた」と聞いています。手術の第一助手を務めたり、簡単な手術であれば執刀したりと、積極的に手技を磨けるのは外科医にとってうれしい環境。特に心臓血管外科は他の診療科に比べても、一人前になるまで時間がかかりますので、たくさん経験を積むことができるのは大きな魅力です。私も当院に赴任してから、下肢静脈瘤の手術に関しては全て執刀させてもらっています。
神栖市は高齢者が多く、特に90歳以上でも元気な方が多い印象です。先日は、鉄工所で働いている方が気胸を起こして運ばれてきたのですが、その方は粉塵を吸い込んだことによる塵肺を発症していました。そうした工業地帯ならではの疾患を診ることができるのも、神栖市の診療の特徴かもしれません。
神栖市若手医師きらっせプロジェクトのように、行政と医療機関が協力して若手医師の育成に力を入れているのは、非常に素晴らしい取り組みだと思います。特にプロジェクトで協力されている産業医学基礎研修会は、他にはないプログラムです。神栖市で働く常勤の医師は、市からの補助が出るなどサポートも充実しています。土日の講習で、認定産業医資格の取得に必要な50単位を半年でとりきれるプログラムなのも、医師にとっては受講しやすいのではないでしょうか。私自身も産業医研修会に参加し、産業医の資格を取得したいと考えています。
また、きらっせプロジェクトでは「専任医療クラーク配置事業」として、各医療機関へのクラークの配置を助成する仕組みもあります。当院にも事務作業を担ってくれるクラークがいるので、医師が医療業務に集中することができます。その他にも、学会や研修会への参加、留学費用の支援など、行政が若い医師たちをバックアップする体制が整っているため、しっかりと学べる環境があります。
さらに地域の医療機関の連携体制も神栖市の強みの一つ。鹿嶋ハートクリニックで循環器以外の疾患が見つかった場合は、速やかに神栖済生会病院や白十字総合病院へとご紹介しています。地域の中で協力し合いながら患者さんを診ていく。ここでの診療を通して、そうした病院間の連携がしっかりと取れているのを感じます。
神栖市に来てまだ3カ月ですが、ここはとても住みやすい街です。国道沿いに飲食店や生活必需品などがそろうお店が建ち並んでいますので、車があれば買い物も非常に便利。海が近いのでレジャーも豊富です。
神栖市での研修に興味がある方には、鹿嶋ハートクリニックはぜひお勧めです。高度な専門性を必要とするような患者さんへの治療が十分にできますし、循環器内科、心臓血管外科、不整脈治療とそれぞれの分野でスペシャリストがそろっているため、自分の専門分野以外で何か困ったことがあれば、他の先生方に気兼ねなく相談できます。
私にとって、患者さんが自分たちの行った医療によって良くなり、笑顔で帰っていく姿を見るのが一番のやりがいです。患者さんたちの穏やかな人柄も神栖市ならではで、医師と患者さんが信頼関係を築きやすい地域だと感じています。今後は、海外留学も視野に入れながら、一人前の心臓外科医として確かな治療を実践していきたいです。