神栖市で活躍する医師

Interview 02

産業医の楽しさと存在意義を多くの若い医師に伝えたい。

日本製鉄(株)東日本製鉄所鹿島地区 安全環境防災部 鹿島安全健康室

産業医 田中 完(たなか ひろし)様

資格・認定
社会医学系指導医、日本産業衛生学会指導医、温泉療法医・宇宙航空医学認定医、労働衛生コンサルタント

産業医がつくる
医療の新しいビジネスモデル

私は、日本製鉄株式会社に所属する社員、つまり産業医として社内で健康管理と診療に携わっています。ですから、対象のほとんどは製鉄所勤務の方々です。製鉄所には日本製鉄社員が約3,500人、関連・協力会社が約8,000人、合計で1万1,500人ほどが勤務していて、1日に100名ほどが診療にきます。年齢層は40~60代と労働者層が中心のため、一般のクリニックと比較すると若く、製鉄所に勤務している間は継続して診ています。診療所に来なくなった場合は、「最近どうしていますか」と連絡をし、サポートしています。また、社内の健康診断と緊密に連携して治療を行えることも特徴のひとつです。通常、企業の産業医は健康診断で再検査が必要な方に対して、病院へ行くように促すしかありませんが、私たちはそのまま診ることができます。医療と介護を両方担う医療機関はありますが、健診と医療の連携も今後必要となると思います。産業医の仕事は、健診と連動している新しい医療のビジネスモデルと言えるかもしれません。

予防や新たな外来など
自分たちのアイデアを活かして

産業医のおもしろさは、自分たちでさまざまな企画を会社側に提案し、実際にそれを社内で実践して健康・医療に結びつけられるところです。例えば禁煙外来ですが、これは無料化することで多くの社員の方が気軽に受診できるようになりました。また、腰痛や肩こりの方が多くいらっしゃるので、はり治療も実施しましたし、お酒を飲み過ぎない減酒外来、無呼吸検査なども導入しました。社員向けの福利厚生サービスですが、働く人に必要な医療サービスを提案・実行することができ、皆さんにも喜んでもらえています。私も経験があるのですが一般病院での外来だと、なかなかたばこを止めてくれない人がいて悔しい思いをすることが多かったりしますが、ここでは製鉄所の屋内を禁煙にするなど、社内のルールを整備することで効果を上げられました。こうしたことも含め、予防に関われることも大きな魅力です。発症してから病気を治すのではなく、その前に手を打つことができるからです。私が病院にいたときは、病気が進行した患者を治療するときも、もちろん全力を尽くすのですが、こうなる前になんとかできなかったのだろうかと思うことが多くありました。産業医はこの思いにしっかり応えることができます。これは、まさに産業医の仕事の醍醐味のひとつではないでしょうか。

産業医への関心が高まり
若い人が集まってくる

私は今、産業医の教育に力を入れて取り組んでいます。そのひとつに社会学系の専門医の研修プログラム(鹿島社会医学系専門医研修プログラム)があります。また、産業医を取得するための研修を実施するべく事業も進んでいます。実現につながったのは、神栖市と地域の指導医等が参画して進めている「神栖市若手医師きらっせプロジェクト」のサポート体制が整ったことが大きいです。実際に動き出すのは今年の夏以降になる予定ですが、半年~1年で産業医をとるための各研修(前期・後期・実地)スケジュールの調整と、プログラム内容を充実させるため尽力しています。
このような取り組みを通して、常勤・非常勤を含めて鹿島製鉄所に多くの若い医師が集ってきています。その理由としては、産業医に興味はあるけれど自分の今の分野の医療も続けたい思いがあり、いきなり専属の産業医になることに躊躇する先生が非常に多く、そのような先生に研修というスタイルを通して、柔軟な働き方と現場重視の産業医研修を提案し、受け入れられているからだと思います。多くのさまざまな領域を背景に持つ意欲的な産業医が集まると雰囲気もよくなり現場が活性化します。実際に、和気あいあいと「あれをやりたい」「これもやってみよう」と、色々な意見やアイデアがでてきて、情報交換も活発になっています。本当に楽しいですよ。そして、こうした楽しさが人を呼び、さらに「ここに来たい」という医師が増えています。この春には常勤の若い医師も赴任することになっています。今は産業医へのニーズも高く、確実に関心が高まっていることを実感しています。

ここを地域・職域連携の
先進的なモデル医療地域に

医師は患者さんと話し、いろいろなことを知り信頼関係を結びます。いくら薬や病気に詳しくても、そればかり話していればいいわけではありません。世間話や医学以外のことを話すと熱心に耳を傾けてくれて、そのまま病気や薬の話を聞いてくれたりするものです。産業医は、こうして世間話をし、働いているところを見ながら、治療を行うことができます。私たちは“全人的”という言葉をよく使いますが、まさに、当診療所では総合的な視点から予防も行い、臨床を行って、一人ひとりに関わることができます。
私はここを、神栖市若手医師きらっせプロジェクトと連携して、日本における地域・職域連携の先進的なモデル医療地域にしたいと考えています。ですから、ここで学ぶ産業医には山口県の松下村塾のように、地域や産業医という医科の枠にとどまらず、これからの日本の医療を担うという気概をもつ若者が集まってくる場にしたいと思っています。

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