Interview
白十字総合病院 副院長/内科部長
関戸 司久 (せきど もりひさ)様
白十字総合病院は、急性期から慢性期、リハビリテーションまで一貫して診られる診療体制が特徴です。敷地内には特別養護老人ホームの「白寿荘」、老人保健施設「白光園」や訪問看護ステーションなど様々な施設があり、地域住民の方に質の高いサービスをお届けできるよう、医療と福祉の連携を心がけています。また、産婦人科や小児科もあるため、あらゆる年代の幅広い疾患に対応していることも特徴の一つだと思います。
2024年には別館病棟を新築し、療養・回復期病棟が新しく生まれ変わりました。特に療養病棟は長期的な入院の患者さんが多いので、環境の改善が病院の課題でもありました。新しい病棟は木のぬくもりを感じる明るくきれいな環境で、患者さんやご家族にもリラックスしてお過ごしいただけるのではないかと思っています。
また、神栖市がある鹿行医療圏には三次救急病院がないため、重症患者さんの受け入れなど、二次救急病院として当院の役割は大きいと考えています。数年前と比べると、救急車の搬送件数は200~300件増えているものの、すべての要請に応えられているわけではありません。まだまだマンパワーが必要なので、今後は救急に対応できる救急医や総合診療医など、医師の数を増やしていくことにも力を入れていきたいです。
私が医師を目指そうと思ったのは、高校生の時です。当時、薬剤師だった父は、ここ白十字総合病院で薬局長を務めていました。父の家系は代々医師で、曾祖父の代から波崎町(現・神栖市)で診療所を開いていたのですが、ちょうど父が医師になろうと思った時に祖父が病気になり、医師の道を諦めたといいます。小さい頃、私はよく父に連れられて、この病院に来ていました。「将来、医者になってこの病院に勤めたらどうか」と言われたことを覚えています。
その後、私は無事に医学部に進学。ところが、私が大学3年生の時に父が心筋梗塞で亡くなりました。私が循環器内科を専門にすると決めたのは、父の病気がきっかけです。いずれは父の願いを叶えるために、地元に戻って医師になろう。その思いで、日本医科大学の第一内科に入局し、循環器内科医として研鑽を積みました。大学病院で10年経験を積み、ここに戻ってきたのが12年前になります。私にとっては子どもの頃から愛着のある病院で働けるのが嬉しいですし、きっと父も喜んでくれているのではないかと思います。
私が白十字総合病院で働き始めた当初は、内科の医師は2人しかいませんでしたが、今では常勤医が5人まで増えました。内科では専門分野に限らず、さまざまな疾患に対応しますので、医師として幅広い診療スキルを身につけることができます。私も循環器内科が専門ですが、それ以外の消化器や呼吸器などの内科疾患も診療しています。
当院には療養病床があるため中心静脈カテーテルを数多く行っているほか、CHDFのためのブラッドアクセスの挿入も実施しています。そうした手技が必要な場面では、これまで循環器内科医として心臓カテーテル治療をしてきた経験が生かせていると感じます。外来では、わざわざ私を指名してくださる患者さんもいて、「自分を頼って来てくれている」と思うと、やりがいがあります。
また、当院は全科の医師が一つの医局に集っているので、風通しもよく、お互いに気軽に話せる関係性です。立ち話で電子カルテを見せながら、患者さんのことをすぐに相談できますし、診療科の垣根を越えた連携もスムーズです。看護師、薬剤師など多職種スタッフとも距離感が近く、一つのチームとして診療ができるのも当院の強みだと思います。看護師は病院と同じ敷地内にある附属の看護学校で育成した人材も多く、チームワークは抜群です。
現在、当院で力を入れているのが、医師の働きやすい環境作りです。以前は、患者さんに1人の主治医が付きっきりで診るのが当たり前でしたが、2人主治医制を導入したり、夜間は別の医師が対応するようにしたりと、医師の負担を減らすための取り組みを積極的に進めています。
また、最新のデバイスを取り入れることで、夜中の呼び出しの回数も抑えられるようになりました。医師が持つタブレット端末にCT画像や検査データを送ると、それを見ながらすぐに緊急処置をしたほうがよいのか、三次救急病院に搬送したほうがよいのか、その場で判断できる仕組みです。状況によっては、病院に行かずに対応することもできます。それに加えて、日々の診療では電子カルテをフル活用し、業務の効率化を図っています。
当院には週3回の勤務で活躍している若手医師もいます。彼は、都内と神栖を行き来しながら、総合診療医としてのここでの診療と、自身で立ち上げたビジネスや音楽活動を両立させています。そうした自由度の高い働き方も選択できる環境を整えているところです。ワークライフバランスを重視したい方にとっても、魅力的な環境ではないでしょうか。
神栖市では、医師や医学生を応援する「神栖市若手医師きらっせプロジェクト」が展開されています。神栖市で働きたいという医師たちを支援するさまざまな制度が整備されているため、県外から初めて神栖市に来て、市内の病院に勤務している人たちもたくさんいますし、私のように地元にUターンしてきた医師もいます。東京からは車で1時間半とアクセスが良いので、生活環境を変えずに通勤することもできます。市全体で医師を呼び込もうという取り組みが活発なのは、素晴らしいことだと思います。
私も、白十字総合病院の副院長として、「ここで働きたい」と思ってくれる医師が増えるように、さらに魅力的な病院にしていきたいと思っています。
神栖市は、私が子どもの頃と比べても街が大きくなり、とても暮らしやすくなりました。全国的に見ても少子化が進むなかで、出生数が増えている珍しい地域でもあります。サッカーJリーグの鹿島アントラーズのホームタウンとして市全体が盛り上がっていますし、海水浴、サーフィン、キャンプなどレジャーを楽しめる場所が豊富にあるので、アウトドア好きの人にもお勧めです。神栖市の良さを味わってもらうには、実際にここに来て体験してもらうのが一番だと思います。当院はいつでも病院見学を受け付けていますので、ぜひ見に来てください。