Interview
私は、2021年の4月から神栖済生会病院に勤務しています。出身は東京で、東京医科大学を卒業後、筑波大学附属病院で初期研修を受けました。医師になって5年、一通りのことが少しずつできるようになり、今は幅広い診療に携わる経験をさせてもらっています。私にとって挑戦できる課題が、ここにはたくさんあるのが魅力です。
現在は、週1日は研究日にあてていて、それ以外の4日を午前と午後で振り分けながら、訪問診療、初診、再診、病棟管理、そして小児科の外来も担当しています。訪問診療では、急な往診の依頼にも対応します。より専門的な治療が必要な場合は、他の地域の病院へ患者さんを紹介することもありますが、どこまでここで診療を行い、どこから専門機関につなげばよいのか、常に考えながら判断しています。
これまでは指導医の先生のもとで動くことが多かったのですが、当院では自分の責任で診る場面が増えています。その分、医師としての責任は重くなりますが、院内の雰囲気がとても良く、それを負担に感じることはありません。医師同士がお互いに声をかけながら、時にはフォローし合える関係です。いざというときのバックアップがあり、フォローしてもらえるからこそ、思い切って挑戦できるのだと思います。
神栖市には臨海工業地帯があるため、工場の定期修理に関わる人たちのように一定の期間だけここに住み、短期的に病院を受診されるケースが多いのが特徴です。沖縄など遠方から来ている方もいらっしゃいます。私が所属する総合診療科では、糖尿病のような基礎疾患のある方に対して、それまでの治療の経緯が分からないまま診療をしなければならない難しさがあります。
例えば、「インスリンが切れたので処方してほしい」と受診される場合、いつから糖尿病を発症していて、どのような状態にあるのかを知る必要があるからです。そのため患者さんご本人に確認するのはもちろん、他県の病院にも問い合わせをして正確に状態を把握するように努めています。患者さんはまた次の現場へと移動されるので、限られた期間の中で、医師としてどこまで治療に踏み込めるかが求められます。そうした診療スキルはこの地域だからこそ身に付けられるものではないでしょうか。
大企業が集まる地域ということもあり、健康診断で要検査となった方の診療も多く引き受けています。働き盛りの世代の方たちに対して、予防などの早期の段階から関わることができることにもやりがいを感じています。
私は認定産業医の資格を持っているのですが、今年の5月には資格更新のために、神栖市若手医師きらっせプロジェクトが全面協力している産業医研修会を受講しました。一日で何単位も取得できるので、日々の診療で忙しい中でも受けやすいですし、工場見学ができるのは他にはない魅力だと思います。短期間で資格を取得したい人にはおすすめのプログラムです。産業医領域は、疾患の予防に関わる医療やメンタルヘルスについても学ぶことができるので、普段の診療においても強みになるはずです。まだ病気にはなっていなくても、リスクのある層に対してアプローチしたいときなど、産業医としての視点を活かすことができます。
また、きらっせプロジェクトでは病院内での実習だけでなく、「住民体験・異業種帯同実習」として、神栖市の青果店や弁護士事務所など地元企業を訪問するプログラムがあるのが特徴です。この地域でどんな方たちが暮らしているのか、どんなことにお困りなのか。そうした視点を持つことは医療に関わる上ではとても大切だと思います。貴重な体験ができるので、学生さんたちからも喜ばれているようです。
神栖市は自然が豊かで、広々とした公園がたくさんあります。衣食住に必要なお店も充実していますし、年間を通して温暖な気候なので、とても暮らしやすい街です。医師として地域で活躍しながら、豊かな人生を送りたいという人にはぴったりの場所ではないでしょうか。
私は趣味でランニングをしているのですが、出勤前にはよく神之池公園に寄って、池の周りを走っています。公園の中心に池があり、その周囲が4.6キロほど。水辺を走ると気持ちがリフレッシュできます。朝早い時間帯に行くと、グラウンド・ゴルフをされている高齢者の方たちがたくさんいて、年齢を重ねても元気に活動されている様子が印象的でした。
神栖済生会病院に赴任するまでは茨城県内の医療機関をいくつか回り、短期間で異動していたので、ここでは少し腰を落ち着けて継続的な視点で患者さんの診療に携わっていきたいと考えています。何か一つのことを極めることも大事だと思いますが、まずはいろいろなことに興味を持ち、幅広い診療に対応できるようにしていきたいです。
神栖済生会病院の若手医師たち