Interview
鹿嶋ハートクリニック 理事長・最高責任者
黄 恬瑩 (こう てんえい)様
私は台湾の出身で、もともとはジャーナリストを目指して台湾の大学に進学しました。医師になろうと思ったのは、日本で開業していた叔父の影響です。当時、1980年代後半の台湾は言論統制でまだまだ規制が多く、そうした制限のあるところよりも海外の自由な環境に身を置いて、自分の可能性を広げられるような勉強をしたいという気持ちがありました。そこで26歳のときに来日し、岐阜大学医学部へ入学。卒業後は昭和大学の大学院に進学し、大学病院で8年間循環器内科を専門に研鑽を積みました。そこで心臓の研究ができたことも、大きな学びになっています。
私が開業を考えるようになったのは、昭和大学病院の医局に勤務していた時に神栖市がある鹿行地域と接点を持つようになり、地域医療の実情を目の当たりにしたことがきっかけの一つです。大学病院では新しい治療法でもすぐに取り入れることができますし、マンパワーが豊富なのでいつでも救急の患者さんに対応できます。しかし、地方の病院ではそうはいきません。専門医の数が少なく、十分な医療設備が整っていない場合も多いため、救急の患者さんを受け入れられる病院は限られていました。地域によっては助けられたかもしれない命が消えてしまうことに強い悲しみを覚えるのと同時に、この地域に自分が出来ることをしたい、という使命感が芽生えたことを覚えています。
この地域でも都心部と同じような循環器医療を提供するにはどうすればよいだろう。そこで思いついたのが、循環器に特化したクリニックを開業することでした。もしこの地域に循環器専門クリニックがあれば、地域医療の在り方は大きく変わるはず。それまで診療していた患者さんをこの地域で診続けたいという思いもあり、2009年に鹿嶋ハートクリニックを開業しました。
クリニックを開業してから、私が力を入れたのは病棟を作ることでした。循環器の治療において、外来診療だけではできることに限界があります。心臓の手術や不整脈のアブレーション治療をするためには、入院が必要だからです。患者さんにとってベストな治療を提供するために、どうしても病棟を作りたい。その念願が叶ったのは開業から5年後。ついに入院病棟を開設し、循環器疾患の診断から手術までトータルで診療ができるようになりました。
現在では、大学病院で行うような心臓、血管治療のほとんどは当院で実施することができます。先進的な治療から低侵襲な外科手術まで、あらゆる治療法を提供できる体制を整えているのが特長です。なかでも不整脈に対するカテーテルアブレーション治療では、内視鏡を使ったレーザーアブレーションという特殊な治療を実施しています。この手術のメリットは手術時間が短く、確実に治療でき、合併症がほとんどないことです。茨城県内でもまだ3施設しか行っていない治療法で、当院の症例数は日本トップクラスを誇ります。
また、当院は循環器の専門医を教育する施設に登録されているため、専攻医の教育にも力を入れています。これまでここで研修を受けて、専門医資格を取得した先生が何人もいらっしゃいます。高度な技術を学びながら多くの症例を経験することができるので、皆さん大きく成長していきます。将来、循環器の専門医として活躍したい方にとって、当院は循環器の幅広い領域を勉強できる最高の環境だと思います。
当院は、そうした日本トップレベルの医療を提供していることに加えて、スタッフ間のコミュニケーションが非常に良く、緊密な連携にも強みがあります。毎週のようにカンファレンスで意見交換をしていますが、それ以外でも日常の診療を通して常に相談し合える関係です。外科と内科の垣根がなく、一体感のあるチームとして動いているため、合併症への対応にもスムーズです。
コミュニケーションでいうと、私は年に2回、当院に勤務する先生方と1対1で食事もしくは面談をする機会を設けるようにしています。それは、お互いの考え方を共有することで、同じ方向を向いて進んでいけると考えているからです。
臨床においては、毎日のように新しい論文が発表され、新しい治療法が開発されています。そのため私たちは、いつも最新の医療を勉強しなければなりません。鹿嶋ハートクリニックは時代のニーズと医学の変化に合わせて、これまで医師たちが学びながら成長してきた施設です。常に変化し続けていることも、私たちの強みだと思います。
神栖市は、「神栖市若手医師きらっせプロジェクト」のような医師を呼び込む活動にも積極的です。新たに神栖市内の専門研修施設に勤務した医師に支援金を交付しているほか、地元出身医師のUターン勤務に補助金を交付するなど、医師へのサポートが充実しています。
今後、私が提案したいと考えているのが、神栖市での国際学会の開催です。学術的なイベントを開催することができれば、神栖市の医療へ注目が集まりますし、国内外の医師たちとの接点が生まれることでさまざまなチャンスが広がるでしょう。
さらに当院で計画を進めているのが、海外からの患者さんの受け入れです。今や国内だけでなく、海外でも日本の専門医療はニーズがあります。当院でそうした海外からの患者さんの治療を行い、滞在期間中は神栖市の観光を楽しんでもらう。そんな医療ツアーを企画することで、地域の活性化に役立てればと考えています。
神栖市は海が近く、年間を通してレジャーを楽しめる場所がたくさんあります。日川浜海水浴場は、白い砂浜と立ち並ぶ風車が圧巻の景色で、海水浴をはじめ潮干狩りやサーフィン、釣りなどができるため、地元の人たちに親しまれているスポットです。太平洋から昇る美しい日の出も有名です。ぜひそうした観光スポットを楽しんでもらいたいです。
私が目指しているのは、当院が専門とする循環器領域において、常に質の高い医療を提供し続けること。いまだに地方と都市部では、受けられる医療の格差は大きいのが実情です。しかし、当院で日本トップレベルの循環器医療を実践することで、この地域の皆さんに少しでも安心していただければと思っています。いざというときに頼ってもらえる病院であるように、今後も努力をしていくつもりです。
医療資源が少ない地域だからこそ、当院が地域に貢献できることも大きいと感じます。実際、神栖市でこれだけの循環器医療が受けられることに、感動してくださる患者さんは多くいらっしゃいます。患者さんに喜んでもらえることが、医師としてのやりがいにもつながっています。
当院で勉強したいという先生方を、私たちは歓迎します。たくさんの症例を経験することで高度な技術を身につけられますし、専門医や認定資格の取得を目指す先生方へは私たちが最大限のサポートをします。若い医師たちを教育し、日本の医療に貢献していくことが、私の使命だと思っています。循環器を専門に腕を磨きたいという方は、ぜひ当院にお越しください。