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神栖市で活躍する医師

神栖市の労働者の健康を守るため、
産業医を育成していく

神栖産業医トレーニングセンター センター長

林 卓哉 (はやし たくや)様

資格・認定
産業医科大学産業医学ディプロマ
産業医科大学専門産業医コースⅠ修了
社会医学系専門医
日本産業衛生学会専門医
医学博士

労働者の健康を守る産業医
社会を支える人を支える

私が産業医になろうと決めたのは、医学部6年生のときでした。産業医を育成する産業医科大学に進学したので、一般的な医学以外に産業医について学ぶ機会が多くあり、「面白そうだな」と思ったのがきっかけです。
産業医科大学の学生講義では、産業医は「感謝されない医師」と教わります。一般的に、医師は病気で困っている患者さんを救うので感謝されますが、産業医は予防がメインなので、困っていない人にアプローチをするのが仕事です。例えば、コレステロールが高いけれど何も症状が出ていない人に対して、「脂質を取り過ぎないように」と注意しなければなりません。そのため、時には煙たがられてしまうこともあります。何かが起こってからではなく、何かが起こる前に対応する医師という意味で「感謝されない医師」と表現されます。実際には会社や従業員から感謝されることも多いですが、感謝されている時点で、私はまだまだ半人前です。
産業医は労働者の健康を守る重要な役割を果たしています。この社会を支えているのは労働者ですから、その労働者がいきいきと働くことを健康の側面からお手伝いをすることは、社会を支えるために重要な要素と考えられます。産業医は社会を支える人を支える役割を担っていると考えています。
2018年より産業医科大学の専門産業医コース修練医として2年間研修した後、2020年からは日本製鉄の産業医として、神栖市のお隣の鹿嶋市にある鹿島地区を担当しました。当時、日本製鉄の専属産業医だった田中完先生の指導のもとで働きながら、産業医の仕事の基本を学べたことはいい経験になったと思います。そして田中先生が神栖産業医トレーニングセンターを立ち上げるタイミングで、「一緒に行かせてください」と手を挙げました。

中小企業で働く
労働者を支えたい

私にはもともと中小企業の労働者の支援をしたいという思いがありました。日本で専属産業医が配置されているのは、従業員が1,000人を超えるような大企業がほとんど。しかし、労働者の中でそうした大企業で働いている人はほんの数パーセントで、残りは中小企業で働く人たちです。神栖産業医トレーニングセンターは中小企業の嘱託産業医として、この地域で働く労働者の皆さんの支援もしているため、私が目指す産業医像とも重なりました。
2022年からは神栖産業医トレーニングセンターのセンター長として、健診や産業医活動の取りまとめ、医師たちの相談対応に当たっています。当センターの主な健診業務は院内健診とバスでの巡回健診で、平日5日間と土曜の院内健診を1日2人の医師で対応しています。特に巡回健診においては、法律上は産業医選任義務のない従業員50人未満の企業様にもお伺いするため、産業医としては関わることができない企業様の健康管理に関わることができるのも魅力です。
また、当施設の特徴の一つとして、病院の一部門として産業医グループがあることが挙げられます。健診で異常が見つかった人の治療などを、白十字総合病院の先生たちに直接ご相談させていただくこともあります。昨年度からはトレーニングセンターのチーム内にも臨床経験が豊富な先生に加わっていただき、より密な連携につながっています。そうした距離感の近さは大きなメリットの一つだと思います。

行政と協力しながら
子どもの受動喫煙を防ぐ活動を

令和7年度には神栖市の「医師研修事業」の対象に選んでいただき、子どもたちの受動喫煙の問題について研究を進めています。研究のきっかけとなったのは、神栖市の事業で開催した小中学生に向けた喫煙予防教室でした。
子どもたちへの教育効果を把握することを目的に、専攻医の先生を中心にアンケートを作成して調査しましたが、別のところでびっくりする結果が出ました。子どもが乗っている車の中や同じ部屋でタバコを吸っている親御さんが、喫煙者の約半数を占めていました。親がタバコを吸っていると回答した子どもが半数以上いましたので、神栖市の子どもたちの4分の1は、家庭内で受動喫煙にさらされている状況ということになります。
今後、子どもたちの受動喫煙を減らすためにどうすればよいのか。産業医だからこそできることがあります。保護者の多くは労働者なので、産業医活動の一環としてこのデータをお見せしながら、「子どもたちの前でタバコを吸わないでください」と伝えることができます。さらに神栖市の健康増進課の方たちにデータを共有したところ、とても真摯に受け止めてくださり、乳幼児教室での啓発活動を強化してくださるとのお話をいただきました。また、学務課にもそのデータを共有してくださるなど、一つの調査結果によって多くの関係者が動いてくださいました。私がたまたま産業医を担当している小学校でも情報共有したところ、今年度の喫煙予防教室に保護者にもお声掛けくださることになりました。
データを共有した結果多くの関係者が動いてくださったという経験から、子どもたちの受動喫煙を減らすためにデータを共有することは有意義なことであり、また神栖市だけでなく全国で起きている問題である可能性も考え、11月の産業衛生学会で全国の産業保健職に向けて発表して啓発をお願いする予定です。

産業医の目的は
「労働者の健康と安全を守る」こと

神栖産業医トレーニングセンターは、社会医学系専門医と産業衛生専門医の研修施設に認定されています。社会医学系専門医は最短3年で受験資格が得られる仕組みで、そこまでいくと次の段階で産業衛生専門医のプログラムを受けることができます。
私が若手の先生たちへの指導で心がけているのは、「目的」と「手段」を見失わないように意識してもらうこと。一例を挙げると、産業医の仕事には労働安全衛生法や労働基準法が関わりますが、一歩間違えば「法律を守ってもらう」ことが目的になってしまいます。もちろん会社にとってはコンプライアンスの観点から法令遵守は大事ですが、産業医の立場での本当の目的は「労働者の健康と安全を守る」ことです。法律はそのための手段だということを忘れてはいけません。たとえ法律で定められていなかったとしても、危ないと思ったら職場の方にお伝えして改善方法を一緒に考える。反対に、健康や安全に問題がないのならば注意しすぎない。そのバランスを常に意識しておくことが大事だと思います。手段が目的化してしまい本来あるべき姿から遠ざかってしまうことは世の中でもよくある話だと思います。あらゆる物事において目的を見失わないように私自身も意識していますし、専攻医にも伝えていきたいと考えています。

また、日々専攻医の先生たちから相談を受けた際にフィードバックを行うのも私の役割です。巡視報告書の作成や面談の方針のアドバイスをしたり、困っている案件の相談を受けることもあります。専攻医の先生に対しては、自分の考えを押し付けないように気を付けています。もちろん間違っていることはしっかり指摘しますが、そうでなければできるだけその先生の考えを尊重したい。私自身まだ専門医を取得して数年しか経っておらず、まだまだ伸び代がある人間です。専攻医の先生には最低限、現在の私のレベルは超えてもらう必要がありますが、私の考えを押し付けてしまうと、現在の私の能力の範囲でしかできなくなってしまいます。私とは違っても、むしろ違うからこそ、その先生だからこそできることを伸ばしていただき、その先生だからこそできる社会への貢献をしてほしいと思っています。私自身もその違いから学び、成長していきたいと考えています。
神栖産業医トレーニングセンターでは、我々の理念をご理解くださっている企業様のご協力のもと、他の施設ではなかなか経験できない、産業医の現場を一緒に見に行く体験ができます。百聞は一見にしかずで、実際に対応している姿を間近で見ると、得られるものが全然違うはず。On-the-Job Trainingで学べるのは、当センターならではの強みです。

他県から移り住んでも馴染みやすい
子育て家族が孤立しない環境

神栖市で暮らし始めて数年ですが、今ではすっかりここが気に入っています。特に子育て支援が手厚いのが魅力です。私には子どもがいるのですが、地域子育て支援センターや児童館など、無料で使える施設がたくさんあります。そうした施設で他の親御さんたちとの交流があるので、他県から移り住んで子育てをしていても孤立しない環境なのが嬉しいです。子どもを遊ばせながら、自然とコミュニティに参加できています。
また、神栖市には鹿島臨海工業地帯があるため、産業医活動や巡回健診では数多くの企業と関わることができます。従業員の方たちの健康増進に力を尽くせることは、大きなやりがいになっています。
神栖産業医トレーニングセンターには臨床研修修了直後の医師や臨床系の専門医を取得された医師など、様々なバックグラウンドを持つ医師が集まっています。地域としても産業医としてのやりがいを感じられるお勧めの地域です。私たちと一緒にこの地域で学び、社会に貢献したいとお考えの方はぜひ一度、見学にお越しください。

取材日:2025年9月8日
神栖産業医トレーニングセンターの詳細はこちら

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