白十字総合病院 総合診療内科
畑 拓磨 (はた たくま)様
私が白十字総合病院で働き始めたのは、2023年に会社を設立したタイミングで自分の働き方について考えるようになったからです。それまでは茨城県内の病院で、総合診療医として週5日のフルタイムで勤務をしていたのですが、事業を法人化することになり、「週3日は病院に勤務し、それ以外の時間で自分の会社の仕事とプライベートを充実させたい」と思うようになりました。仕事に対する考え方だけでなく、家族との時間を何より大切にしたいという価値観も、働き方を見直すうえで重要な要素でした。とはいえ、自由な働き方ができる病院を見つけるのは簡単ではありません。
そんなとき、私がコアメンバーを務める「病院マーケティングサミットJAPAN」で開催した勉強会を通して白十字総合病院に勤務されている先生と出会い、「うちの病院だったら畑先生が思い描く働き方ができるかもしれないよ」と声をかけてもらったのです。
現在、私は週3日+α(平日3日および休日の救急外来)病院に勤務し、総合診療の外来や救急患者さんに対応する日当直を担当しています。総合診療医として一般的な内科疾患はもちろん、鹿島臨海工業地帯が近いため、労働災害なども含め、さまざまな疾患を診ています。
かねてから救急の受け入れが課題になっていることもあり、私ができることと白十字総合病院が抱えている課題感やニーズがうまく合致した結果が、この働き方につながったのだと思います。病院としてはこれまでに前例のない医師の働き方だったと思いますが、柔軟に受け入れてもらえたことに感謝しています。

現在は総合診療科医師としての病院勤務をしながら、経営者と歌手の3つの仕事をしています。私が経営している「Mediative株式会社」は「医療×クリエイティブ」を軸に、医療機関の課題解決をデザイン・映像・マーケティング・テクノロジーの力で支援する会社です。医師としての仕事以外に、自分の会社を経営していることで、新たな視点を持つことができるようになりました。
例えば、医師の仕事にはさまざまな業務が内包されていますが、限られた時間で経営と病院勤務を両立させるためには、自分にしかできないことは何なのかを考え、それ以外を手放すことが必要だと思っています。
最近では医療におけるDX化が進んでいますが、医師以外でもできる仕事はどんどんAIを活用していくべき、と考えていたりします。医療以外の世界では当たり前に行われているアウトソーシングの発想を取り入れ、外部の視点を持つことこそが、医療とビジネスを両立させている私の強みです。

私が医者としても、会社の代表としても実現させたいのは、「医療の質の向上」です。そのために医師としてスキルアップすることはもちろんですが、例えば自施設における医療の質の向上を考えたとき、病院の医療安全のシステムを構築・改良することもそれにつながると考えています。
医療安全の面から私がまず白十字総合病院で取り組んだのが、CODE DNARの共有です。CODE DNARとは心肺停止時に蘇生処置(心臓マッサージや人工呼吸など)を行わないという意思を事前に決めておく対応方針のことです。当院では、CODE DNARに関する明確なガイドラインが設定されておらず、その取り扱いが医療者や病棟ごとに異なるという根本的な問題がありました。その結果、対応が標準化されず、医療の質の向上に結びつかないリスクが生じていたのです。
当院ではその状況を変えるために、医療安全の管理者と看護部に協力してもらい、CODE DNARの認識をスタッフで共有するためのレクチャーを行いました。私の提案からすぐに勉強会が開かれたのは、「医療の質を向上させたい」というビジョンを共有できたからこそ。物事を変えようとしたときの動きが早いのは、当院ならではの良さだと思います。新しいことに取り組みたい、課題を解決したいとなったときの、スタッフの連携がとても早いのです。

「神栖市若手医師きらっせプロジェクト」の一環で、アピール対策検討分科会に参加しています。神栖市は医療と行政が緊密に連携をとっていることが強みで、医療機関と行政の担当者、民間企業が三位一体となって情報発信に取り組んでいます。分科会では、神栖市で働く楽しさや、やりがいを感じてもらうための施策について、活発な議論が交わされているところです。
私は自分の事業で「医療とクリエイティブをつなぐ」ことをビジョンに掲げ、医療機関の採用・広報支援、SNSの運用代行、映像・Web制作などを行っているので、事業を通じて得た知識や事例を分科会で共有しながら、参加者全員が施策を具体的にイメージできるよう努めています。今後はSNS等も活用しながら、若手医師への情報発信をさらに充実させ、神栖市で働くことの魅力を広く伝えていけたらと考えています。
また、こうした広報活動は、医療の担い手を増やすきっかけとなるだけでなく、医療現場の課題を少しずつ解消していくための一手段にもなり得ると感じています。これまでの様々な活動を通じて、医療が抱える問題は、医療の中で完結できるものばかりではなく、外部との連携や新しい視点が必要だと実感するようになりました。だからこそ、医療をクリエイティブとつなげることで、医療課題を解決するためのヒントを探す場を、外の世界へと広げていくことが大事だと思っています。

神栖市は、自然の豊かさと都市の利便性がほどよく調和した、住みやすいまちだと感じています。海や神社などの自然やスピリチュアルな要素もあり、落ち着いた環境の中で心地よく暮らせるのが魅力です。飲食店も充実していて、安くて美味しいお店が多く、食事を楽しめるのも嬉しいポイント。私は川魚が好きなのですが、市内やその周辺では鯉の刺身やウナギなども味わえます。
大きな公園や防災アリーナなどの施設や子供連れで気軽に入れるチェーン店なども整っていて、子育て世代にも安心です。何か一つが突出しているわけではありませんが、さまざまな面で高い満足度が得られる、そんなバランスの良さが神栖市の魅力だと思います。
若い先生たちに伝えたいのは、自分のやりたいことをやるために、一歩踏み出してみてほしいということ。今や、医者になったからといって、将来安泰なわけではありません。医師になれば大丈夫という時代は、もうすぐ終わるかもしれません。おそらく今の医学生や若手医師の方たちには、その不安を感じているのではないでしょうか。
では、医師としてどうやってその不安を解消するのか。大事なのは、自分にしかできないコアな価値を見つけることだと思います。私自身、経営の世界に飛び込んでみたからこそ、医者であることの自分の価値に気付くことができました。
皆さんにとって神栖市は未知の場所かもしれません。でも、その知らない場所に行って、新しい世界を知ることで、自分の価値を見つめ直すことができるはずです。私でよければいつでも相談に乗りますので、ぜひ思い切って一歩踏み出してみてください。
